死なないためにブログ書く。

贅沢したいわけじゃない、ただ普通に生きるためのコスト(お金も努力も)、高すぎじゃない?

俊という後輩のこと

度々このブログで、私は比較的親しい人間を自死で亡くしたことがあると書いてきた。

あと、このブログを私が詩やら小説やら発表している「カクヨム」から見に来てくれている人もいるけれどそちらでもぽつぽつこのことを話している。

 

このブログはタイトルの通り「死なないために」書いていて。でもまあ人はいつ死ぬかわからない。彼が亡くなって16年経つし、彼は私の人生に影響を与えた人間だし。

何というか、人生の棚卸的な感じで、いつかはちゃんと書きたいと思っていたので、ここで書こうと思う。彼以外にも、私の身の回りの人についても追々書きたい。

 

さて。

そうだなぁ。彼は「お兄ちゃん」だった。

高校時代の演劇部の、一個下の後輩なんだけどね、私よりしっかりしていたから。

私には年の離れた実兄がいて、あと私の実家は両親の仲が悪かったから、私が必要以上に手のかかるぽやっとした妹でいることで何とか家族を保とうとしていてね、身近にしっかりしてて尚且つ優しくしてくれる人がいると、妹っぽく振舞ってしまう癖がついているのよ、年下相手でもね。だから、彼は後輩でありながら妹のように私を弄ってくるような子だった。彼自身にも実妹がいたしね。

四角い縁なし眼鏡に、真っ黒な髪。服も大体黒。ぱっと見は地味なオタク君って感じなんだけど、その実運動神経は良かった。マラソン大会では陸上部差し置いて学年一位だったとか。あと声もやたら良い。夜中の通販番組の、ダイエット系器具の解説のときに出てくる金髪日焼けムキムキ歯がキラリ、って感じの外国人のアテレコをさせるとぴったりで、よくそれで周囲を笑わせてた。

演劇部で、二人ともどちらかと言えば裏方よりも役者寄り。だから、演じてみたい場面の話なんかで盛り上がるんだけど。覚えてるのは、母親役に頬を張られて眼鏡を飛ばして、その眼鏡を拾いながら「 母さんも……わかってくれないんだね…… 」って台詞を言う場面。「何それww」って笑ったなあ。

B’zが好きで、特に好きな曲だと言っていたのは「 ながい愛 」。

で、その曲の出だしがね。

つまんない毎日をただ忘れ 遊びたいだけなんだ

これが永遠かのように いっときの情熱を楽しむ

部活を。三年で終わる部活を。本当に引退と同時に死んでも構わないと思うぐらいに打ち込んでいた、二人とも。そして、二人とも芝居が大好きだったけど、卒業後もその道に進むことはできなかった。彼は親がそれを認めなかったようだし、私も親に反対されていたのもあるけどそれを蹴ってその道に進む自信もなかった。

こんなことがあった。

私は三年だけど、推薦で大学が決まっていたから引退しなかった。彼は二年。私が役者で、彼は演出で。地区大会、県大会と勝ち進み、翌年一月に行われる関東大会への進出が決まり。推薦で入学が決まってたけど、大学からはセンター試験を受けるように言われていて。なんとそのセンター試験と関東大会の日が重なっていた(進出決定前からわかっていた)。そして、進出が決まった瞬間私はこう言った。

「うん!センター試験はサボりで!」

そう言うと、彼は心底楽しそうに

「 ははははは!だーめにーんげーん!」

と笑って。ぎゅーっと抱きしめあった。

それで、良かったのだ。二人の間では。言語化も認識もできてなかったけど、本当にこの日々が終わったあとの人生は辛くなることが、こんな輝いた日々はこの先訪れないだろうことが心の底ではわかってて。二人とも人生はこの日々だけでいいのになと思っていた。

※ちなみにセンター試験は後日新聞に掲載された問題を解いて提出する形で良しとされました

その後、私は卒業し芝居とは関係ない大学へ。一年遅れて彼もまた芝居とは関係のない大学へ。

私は誤魔化し誤魔化し大学をどうにか卒業したけど、彼は中退し。

そして、彼が線路に飛び降りたらしいと連絡が入ったのは、私が社会人一年目のGW明けのことだった。大学を辞め、牛丼屋のアルバイトに初出勤するその日だったと聞いた記憶がある。

 

その知らせを聞いてから、いろんなことを思ったけども。一番思ったのは

「 先に一人で逝ったんだね 」

だった。高校卒業前にぼんやり思っていたとおり、あの日々以上に楽しいことなんて見つけられなかったしこれからも見つかる気もしなくて。私が新卒で入ったところだって、今でいうブラック企業で。先に死んでたのは私だったかもしれなかったから。

亡くなった後、俊はしょっちゅう夢に出てきた。その夢のほとんどが、廊下の奥とかどこか遠くにいる俊を見つけて私が走ってそっちに行こうとするような夢。言葉を交わせることはなかった。でも、一度だけはっきりとこう言ってきたことがある。

「 死ぬのなんて、どんな方法でも苦しいですよ、〇〇先輩 」

そうだろうねえ。でも、生きるのもなかなか大変よ。君が今の世を、私を見たらどう思うだろう。想像すると、怖くなる。

 

私には霊感はない。不思議な体験は何度かあるけど、くっきりはっきり「幽霊」を見たこともない。けど、彼に関しては恐らく十年ほどこの世に留まっていたように思う。十年経ってから、彼はどこかへ行った。彼岸とか、あの世とか、輪廻の輪とか、そういう場所。そう思わされたのにはこんな経験がある……と、語ろうと思ったんだけどずいぶん長くなったので、次回。我ながら毎度毎度想定より長くなって、ほんと「簡潔」の才能が無いと思う。けどいいんだ。自分のため9割だから。

 

ではではまた明日……は祝日で夫が家にいるから多分書けないな。また明後日。